健康・予防・両立支援
みんなの健康情報 2024/03/19

健康に配慮した飲酒に関するガイドライン

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

アルコールはさまざまな健康障害との関連が指摘されており、年齢や性別、体質等によってリスクが変化するため、健康に配慮した適切な飲酒量・飲酒行動が大切になります。
厚生労働省は、最新の科学的知見に基づき、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を初めて策定しました。本記事では、ガイドラインをもとに、飲酒による身体等への影響、健康に配慮した飲み方等について解説します。従業員の方向けの情報提供用としてもぜひご活用ください。

<目次>
◆最新の知見に基づいた「飲酒ガイドライン」まとまる
◆健康を害する不適切な飲酒を減らすことが目的
◆飲酒による身体等への影響は、個人差が大きい
◆過度な飲酒は、社会問題にも発展
◆飲酒量を「純アルコール量」で把握しよう
◆健康に配慮した飲み方をしよう
◆飲酒によってリスクが上がる疾病について、知っておこう
◆禁止事項、避けるべき飲酒について、正しく理解しよう
◆飲酒に伴うリスクを理解して、自分の体に合った飲み方をしよう

最新の知見に基づいた「飲酒ガイドライン」まとまる

厚生労働省は、最新の科学的知見に基づき、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(以下、「飲酒ガイドライン」という)」を策定し、2024年2月に発表しました。これは日本初の飲酒ガイドラインです。

このガイドラインが作られた背景には、2013年に成立した「アルコール健康障害対策基本法」があります。この法律に基づき、アルコール健康障害対策の総合的かつ計画的な推進を図るために2021年に策定されたのが「アルコール健康障害対策推進基本計画の第2期計画」で、その中で「飲酒ガイドライン」の作成が決定されていました。

健康を害する不適切な飲酒を減らすことが目的

飲酒ガイドラインの目的は、アルコール健康障害の発生を防止することです。そのため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って、不適切な飲酒を減らすことに活用できるよう、飲酒による身体への影響、考慮すべき飲酒量や健康に配慮した飲み方について解説しています。

飲酒による身体等への影響は、個人差が大きい

アルコールは血液を通じて全身を巡り、全身の臓器に影響を与えるため、飲み過ぎた場合には、いろいろな臓器に病気を引き起こす可能性があります。また、飲酒による身体への影響は、年齢、性別、体質等で個人差があり、リスクも異なるため、注意が必要です。

(1)年齢の違いによる影響

高齢者は、飲酒量が一定量を超えると認知症、転倒・骨折、筋肉の減少(サルコペニア)の危険性が高まります。
また、未成年者や20歳代の若年者は、脳の機能低下や高血圧等の健康問題のリスクが高まる可能性があります。

(2)性別の影響

女性は男性に比べて少量かつ短期間の飲酒で、アルコール関連肝硬変になる危険性が高まります。

(3)体質の影響

アルコール分解酵素の働きの弱い人は、アルコールを原因とする口の中のがんや食道がん等のリスクが高まります。

過度な飲酒は、社会問題にも発展

適度な飲酒は、私たちの生活に楽しみを与えてくれます。しかし、過度な飲酒は疾病発症等のリスクを高めます。さらに、集中力の低下による事故、紛失物の発生、不適切な行動(飲酒運転、暴力、虐待など)へのリスクも高め、飲酒が社会問題に発展することもあります。

飲酒をする際は、こうしたリスクを理解した上で、自分に合った飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心がけることが重要です。

飲酒量を「純アルコール量」で把握しよう

では、自分にあった飲酒量を知るにはどうしたらいいでしょうか。
飲酒ガイドラインでは、お酒に含まれる純アルコール量によって飲酒量を数値化する方法を示し、自分のアルコール摂取量を把握することを奨励しています。

お酒に含まれる純アルコール量(g)は、摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)で数値化できます。飲んだお酒の量(ml)だけでなく、お酒に含まれる純アルコール量(g)に着目することは重要です。

お酒に含まれる純アルコール量(g)の算出式
摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)

例:ビール500ml(5%)の場合の純アルコール量
500(ml)×0.05×0.8 = 20(g)

健康に配慮した飲み方をしよう

飲酒ガイドラインでは、健康に配慮した飲み方も奨励しています。以下の点に留意して、飲み過ぎによるさまざまなリスクを避けましょう。

(1)自らの飲酒状況等を把握しましょう。

自分の状態に応じた飲み方をすることで、飲酒のリスクを減らすことができます。
医師に相談したり、AUDIT(問題のある飲酒をしている人を把握するためにWHOが作成したスクリーニングテスト)などを活用しましょう。

(2)あらかじめ量を決めて飲酒をしましょう。

酒に含まれる純アルコール量を認識し、前述の計算方法で、自身のアルコール摂取量を把握することも大事です。

(3)飲酒前または飲酒中に食事をしましょう。

血中のアルコール濃度が上がりにくくなり、お酒に酔いにくくする効果があります。

(4)飲酒の合間に水(または炭酸水)を飲みましょう。

アルコールをゆっくり分解・吸収できるようになります。

(5)1週間のうち、飲酒をしない日を設けましょう。

毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避けましょう。

飲酒によってリスクが上がる疾病について、知っておこう

飲酒ガイドラインでは、病気ごとに、どの程度の飲酒をすると疾病の発症のリスクが高まるか、研究に基づいて、純アルコール量で目安を示しています。

たとえば、脳梗塞では、純アルコール量で男性は週300g以上、女性は週75g以上を摂取すると発症リスクは高まります。高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中は、少量でも発症リスクが増加します。大腸がんは1日当たり20g程度で発症リスクが増加します。

【出典】厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf

禁止事項、避けるべき飲酒について、正しく理解しよう

飲酒ガイドラインでは、禁止事項と、避けるべき飲酒や飲酒に関連した行動を列挙しています。

飲酒に関する重要な禁止事項

酒気帯び運転、20歳未満の飲酒など、法律違反に当たる飲酒
妊娠中や授乳期中の飲酒、体質的に酒を受け付けない人の飲酒

避けるべき飲酒と飲酒行動

(1)一時多量飲酒(特に短時間の多量飲酒)
さまざまな疾患の発症や急性アルコール中毒、外傷のリスクがあります。

(2)他人への飲酒の強要
飲酒はさまざまなリスクを伴う可能性があるので、他人への飲酒の強要は避けましょう。

(3)不安や不眠を解消するための飲酒
依存症になる可能性を高めたり、睡眠リズムを乱すなどの支障をきたすことがあります。

(4)病気療養中の飲酒や服薬後の飲酒
病気療養中は、過度の飲酒で免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性があります。服薬後の飲酒は、薬の効果が弱まったり、副作用が出ることがあります。

(5)飲酒中や飲酒後における運動や入浴など、体に負担がかかる行動
飲酒により血圧の変動が強まり、心筋梗塞を引き起こす可能性や転倒などを引き起こす可能性があります。

飲酒に伴うリスクを理解して、自分の体に合った飲み方をしよう

ここまで、飲酒に伴う健康リスク、過度の飲酒によって生じるさまざまな問題、健康に配慮した飲み方について、飲酒ガイドラインに沿って解説してきました。
飲酒は日本の伝統や文化に組み入れられ、私たちの生活に深く浸透しています。適度な飲酒は生活に豊かさや彩りを与えてくれるものです。

しかし、過度な飲酒は、さまざまな健康問題や社会問題を引き起こします。また、アルコールが体に及ぼす影響には個人差があり、その時の体調によっても影響の度合いが変わるので、注意が必要です。
飲酒によるリスクと、健康に配慮した飲み方を知り、自分に適切な量の飲酒を心がけて、毎日を元気に過ごしましょう。

原稿・社会保険研究所Copyright

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【出典】
・厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf

・厚生労働省「アルコール健康障害対策基本法(平成25年法律第109号) 」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12205250-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kokoronokenkoushienshitsu/s_2_11.pdf

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※当記事は、2024年3月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。