特集
インタビュー/座談会 2024/02/15

【ソーシャルアクションギフト企画】<2/15は国際小児がんデー>スポーツ選手から知る病気のこと

<2/15は国際小児がんデー>スポーツ選手から知る病気のこと

小児がんの子ども達に笑顔を 兄から弟へ引き継がれた、久光選手のフットサルリボン活動

2013年に肺がんと診断。2020年12月に亡くなるまで、フットサルの全国リーグ「Fリーグ」の選手として最後まで現役を貫いた久光重貴さん。

2014年には小児がん患者を支援するフットサルリボン活動を開始し、小児がん患者に向けてフットサル教室や病院慰問を行うなど、子ども達の笑顔のために尽力してきました。

現在は、久光重貴さんの弟である邦明さんがフットサルリボン活動を引き継いでいます。兄弟として、フットサル選手として、一番近くでその姿を見てきた久光邦明さんに、兄への気持ち、そしてフットサルリボン活動にかける想いを伺いました。

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久光邦明さん 対談

<対談メンバー>
久光邦明さん:
フットサルの全国リーグ「Fリーグ」で選手として活躍し、2016年に引退
兄である久光重貴さん(※)から小児がん患者への支援活動「フットサルリボン」http://f-ribbon.jp/about/を引き継ぎ、2021年より一般社団法人Ring Smileの代表理事に

高橋大さん:T-PEC株式会社 ヘルスケアストラテジー部 部長
三宅雄大さん:T-PEC株式会社 ヘルスケアストラテジー部

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※久光重貴さん:

(写真:一般社団法人Ring Smileホームページより引用)

2009年にフットサル日本代表に選出。
2013年7月のメディカルチェックで右上葉肺腺がんが見つかったが、その後も抗がん剤治療を受けながらFリーグ「湘南ベルマーレフットサルクラブ」で選手として活躍。
2014年、当時同じく現役選手でありながら上咽頭がんで闘病を続けていたデウソン神戸の鈴村拓也さんと共に「フットサルリボン」を立ち上げ(2015年には一般社団法人Ring Smileを設立)、病棟慰問、長期入院をしている小児がんの子どもたちに向けてのフットサル教室、募金活動、Fリーグへの試合観戦招待などを実施。2020年12月、逝去。
想いや取り組みを継承すべく、所属クラブ(湘南ベルマーレ)は世界小児がん啓発キャンペーンなど実施しています。
――――

余命を聞かず、「選手を続ける」と言った兄

三宅:
邦明さんは大学までサッカーをやっていて、2007年のFリーグ発足を機にフットサルに転向したと伺いました。

久光邦明さん:
僕が大学を卒業するタイミングで、フットサルの全国リーグ(Fリーグ)がスタートすると聞いたのがきっかけでした。すでにフットサル選手として活躍していた兄のプレーを見てから興味を持っていたので、「自分もやってみたい」と兄に伝えたところ、「お前には無理」とバッサリ。

兄に反対されたままでしたが、どうしてもやりたかったので、兄が所属していた「ペスカドーラ町田」に加入しました。

僕たちは3歳違いの兄弟で、子供の頃からよく喧嘩をしていました。その頃も、同じチームで同じ家に住んでいるのに練習場への行き帰りは別々という仲の悪さで(笑)。その後、兄は「湘南ベルマーレ」へ、僕は岩手や大分と、それぞれ別のFリーグのチームでプレーをしていました。

高橋:
お兄さんのがんが見つかったのは2013年の7月でしたよね。

久光邦明さん:
シーズン前のメディカルチェックで肺がんが見つかりました。詳しく検査をした結果、かなり進んでいるため、手術は難しく、抗がん剤のみの治療になるとのことでした。母と自分も診察室に呼ばれ、主治医から「余命を伝えたい」と話があったのですが、兄は「余命は聞きたくない」と診察室から出て行ってしまいました。

僕は急いで兄を追いかけました。すると兄は「ボール持っているか?」と聞いてきて。病院の空きスペースで、車に置いてあった空気が抜けたボールを2人で蹴りながら話をしたんです。

あの時のことは今もはっきりと覚えています。ボールを蹴りながら「選手を続ける」とつぶやく兄。「絶対に休んだ方がいい」と思いながらも、何も言うことができませんでした。

そんな兄に僕もできる限りのことをしたかった。「何か力になりたい」と兄の所属する「湘南ベルマーレ」の相根澄監督(当時)に伝えたところ、2013年10月に「バサジィ大分」から「湘南ベルマーレ」に移籍することに。当時の社長、監督をはじめ、Fリーグの皆さんが兄のために骨を折ってくれたおかげで、同じチームでプレーできることになったのです。

兄が住む平塚に迎えに行って、練習場のある小田原まで。行き帰りもいつも一緒でした。「ペスカドーラ町田」にいた時は全く別々だったのに、今思うと不思議ですね。

治療とフットサルの両立、7年半も選手として活動。忘れられないファンの声援

高橋:
抗がん剤治療をしながら選手を続けるのは、並大抵なことではないですよね。

久光邦明さん:
抗がん剤の副作用による吐き気など、体調が悪いのも大変そうでしたが、月に1回、治療の効果を見る検査があって、いい結果が出なかった時は本当につらそうでした。そして落ち込む兄にどう言葉をかけていいかわからない自分が、もどかしくて仕方がなかったです。

今も思い出すのは2013年のシーズンの最終節、兄がメンバー入りした時のことです。僕もメンバー入りしていたので、ウォーミングアップで一緒にボールを蹴りながら「兄ちゃん、すごい頑張ったんだな…」とそれまでの想いが込み上げて、ボロボロと泣いてしまいました。それから、兄の復帰を待っていてくれたファンの皆さんの声援が、とても大きく温かかったことも、よく覚えています。

その後も治療を続けながらピッチに立ち続け、7年半も選手として活動してきた兄。
診断から5年目くらいの頃は「兄ちゃんはずっと生き続ける」と思っていたくらいでした。

小児がん患者の支援活動。子ども達の笑顔が、兄に大きな力をくれた

三宅:
お兄さんの生前、邦明さんもフットサルリボンの活動を手伝ったことがあるそうですね。

久光邦明さん:
引退してすぐの2017年、病院の体育館でプレーをさせてもらったことが最初でした。その時はまだ、小児がんのことをあまり知らなかったのですが、みんな本当に喜んでくれて。素晴らしい活動だと思ったので、兄には「定期的に参加したい」と伝えました。

普段、兄は僕に対して口数が少ないのですが、この日以来、子ども達のことで会話が増えました。子ども達と接している兄は本当に楽しそうで、子ども達から大きなパワーをもらっていることがはっきりわかりました。

高橋:
お兄さんから「フットサルリボンを引き継いでほしい」と言われた時は、どんなお気持ちでしたか?

久光邦明さん:
亡くなる3日前のことでした。兄は痛み止めの薬でぼんやりしている状態でしたが、精一杯の声で「社団を引き継いでくれるか」と言われて。もちろん、断る理由なんてありませんでした。ただ、ここで「任せてよ、兄ちゃんはゆっくり休んで」なんて言ったら、気持ちが切れちゃうと思ったので「兄ちゃんのやりたいことを言ってくれれば、自分が動くから、これからも一緒にやっていこうね」と伝えました。

フットサルで前向きな気持ちになってほしい。全国に届ける「オンラインフットサル」活動と、本物のフットサルを見せる病院訪問

三宅:
現在のフットサルリボンの活動を教えてください。また今後、どのような活動をしたいですか。

久光邦明さん:
新型コロナウイルスの影響もあり、病院の慰問に行くことができていないので、月に1回、病院の子ども達とオンラインでつながる「オンラインフットサル」をやっています。現役のフットサル選手にも参加してもらい、一緒にクイズとかちょっとしたゲームとかをするのですが、みんな本当に楽しんでくれるんです。

たった30分間ですが、前向きな気持ちを持ってもらえたら、こんなにうれしいことはありません。オンラインなら、全国ともつながれるので、今後も続けていきたいですね。

病院慰問ができるようになったら、病院にフットサルボールを提供したり、一緒に体を動かしたりといったことをしたいですね。そして、いつか病院の体育館でフットサルをして、子ども達に選手達のプレーを見せたい。なかなか外に出ることができない小児がんの子どもたちに、本物を見せてあげたいです。

引き継がれていく、重貴選手の想い 子ども達には気持ちに寄り添い真剣にぶつかっていきたい

高橋:
「湘南ベルマーレ」では、重貴選手の想いや取り組みをクラブとして継承するため、2021年から「ヒサと共に。」活動を開始しましたね。

参考:川崎戦「ヒサと共に。2022」https://www.bellmare.co.jp/294191

久光邦明さん:
フットサル、サッカーの枠組みを超えて、「湘南ベルマーレ」には活動を支援してもらい、本当に感謝をしています。ベルマーレから、フットサル界から、そして関わってくださった多くの人達から愛された兄。病気を抱えながらもフットサルに向き合い、小児がんの子ども達に寄り添い続けた姿に勇気づけられた人も少なくないはずです。

僕は兄とは違いますし、兄も「やりたいようにやっていい」と言ってくれたので、僕なりの活動をするつもりですが、兄の誠実さを見習って、子ども達には真剣にぶつかっていきたい、そして子ども達の気持ちに寄り添いながらも楽しい時間を作ってあげたいと考えています。もし迷ったときには「兄ちゃんならどうするかな」と心の中でたずねながら、フットサルリボンを続けていきたいと思っています。

――久光邦明さん、貴重なお話しをありがとうございました。

取材・執筆:医療ライター/瀬田尚子
取材・編集:ティーペック広報/大井美深


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※当記事は2024年2月時点で作成したものです。