スポーツで読む・知る・病気のコト!No.1潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)「同じ病気でも頑張っている」〜千葉ジェッツ・原修太が広げる勇気の輪〜
潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)という病気を知っていますか?
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、血便を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳ですが、若年者から高齢者まで発症します(※)。
※難病情報センターホームページ(2023年7月現在)から引用、一部改変
https://www.nanbyou.or.jp/
今回、潰瘍性大腸炎という難病と戦いながらも、同じ病気で苦しむ人たちの力になるために『ハラの輪』という活動を行っている、Bリーグ千葉ジェッツふなばし(以下、千葉ジェッツ)に所属する原修太選手(以下、原)のインタビューをご紹介します。
彼がどんな想いでこの活動をスタートさせたのか、子どもたちと触れ合うことで感じたことや、これからの『ハラの輪』の目指す姿などをお伺いしました。
ハラの輪
©CHIBAJETS FUNABASHI
同じ病気と戦うアスリートからの勇気で、一歩を踏み出せた
ーーまず、『ハラの輪』の活動について教えて下さい。
原)きっかけは、僕自身が潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)という病気になったことです。内面的な症状で目に見えづらい病気なので、「こんな病気があるんだよ」ということを発信して、人々がその病気を知る機会を作りたいんです。僕を通して病気を知って、その病気と戦う人たちに対して、思いやりを持つ輪を作りたい。そして、僕を中心にそんな輪が広がればいいなという想いで始めました。
もともと病気になる前から社会貢献活動をしたいと思っていたんですが、活動のスタートに踏み切ったのは、僕が潰瘍性大腸炎を患ってから、プロ野球の安達了一選手(オリックス・バファローズ)も同じ病気だということを知ったのが大きかったです。直接お会いしたことはなかったのですが、安達選手が第一線で頑張っているのを知って、本当に勇気をもらえたんです。
ーーご病気になる前から社会貢献活動をしたいと思っていた背景は、どこにあるのでしょうか?
原)全員じゃないかもしれませんが、僕のまわりには「スポーツを通して勇気を与えたい」「何か社会貢献活動をしたい」と思っている選手が多いです。
参考:絵本を通して伝える。プロバスケットボール選手 佐藤卓磨の子どもたちへの思い(https://sports-for-social.com/sports/jets-satotakuma/)
ただ、そんな想いはあっても、明確に「こんな活動をするんだ」と描けている人は少ないかもしれません。プロにはなり、活動をしたいけどその一歩を踏み出せないというか。
ーー原選手の場合は、漠然としていた想いが、ご病気や安達選手をきっかけにして、より明確になったという感じなのですね。
原)そうですね。まだ活動をしていないバスケや他のスポーツ選手たちは、みんなそれぞれ僕のように“想いはあるけど、きっかけがないだけ”だと思います。
触れ合うことで、感じた「不安」と届けた「安心」
ーー特に今シーズンは、活発に活動されている印象です。病院への訪問やホームゲームで招待したみなさんとの触れ合いを通して、何か感じることはありましたか?
原)オンラインでしか交流ができなかった時期もありましたが、少しコロナが落ち着いた時期に病院訪問や試合への招待を始めました。そこで子どもたちと話してみたら、みんな病気に対して不安な気持ちがあるんだな、と改めて思いましたね。
特に、僕と同じ病気の子どもたちと長く話したんですけど、そもそも『潰瘍性大腸炎』というわかりづらい病名から来る不安だったり、症状が落ち着かない辛さが伝わってきました。
一方で、話していくうちにわかったこともあります。潰瘍性大腸炎は痩せていったり、体重が増えにくい病気なのですが、子どもたちは身体が大きな僕を見て「大丈夫なんだ」と安心してくれました。直接会って話すことができたからこそわかったことですし、充実した時間でした。
ーー子どもたちが原選手の体の大きさを見て元気と勇気をもらえたのは、原選手が安達選手を見て勇気をもらったケースと近いものがありますね。
原)そうですね。参加してくれたみなさんには楽しんでもらえましたし、子どもたちが単純にバスケットボールを好きになるきっかけにもなったら嬉しいです。
ーー「プロバスケットボール選手」が一番の本業であり、シーズン中の活動はすごく大変そうだなと想像しますが、『ハラの輪』の活動がご自身に活きることはあったりしますか?
原)子どもたちは、僕が話すことで勇気や元気を出してもらうこともあります。ですが、それ以上にすごく元気で、なおかつ「今は病気で大変だけど、これを乗り越えたらこういうことをやりたい」など、夢を持っている子が多いんですよ。僕のモチベーションをすごく高めてもらえる存在ですし、それはこの活動を始めた今だからこそ、強く感じていますね。
“輪の広がり”の裏に、支えてくれる「チーム原」の存在
ーー『ハラの輪』の活動がスタートして2年以上経ちますが、ここまで続き、発展できた理由は何だと思いますか?
原)そうですね・・続けてきた理由は、正直やめる理由がなかったんですよね。(笑)
やはり支えてくれるいろいろな人の存在が大きいです。
活動を始めたとき、僕が所属する千葉ジェッツも、学校などの訪問を通じて社会貢献活動に取り組んでいることは知っていました。僕もそれに参加するという選択肢もあったのですが、今後のキャリアも考えると、「一人のアスリートの活動」としてトライしてみることにしました。
最初はTwitterを通してバスケットボールをプレゼントする企画からスタートしましたが、当選者への連絡や一人ひとりとZoomでお話するスケジュール調整など、本当に大変なことばかりで。「結局一人じゃ何もできないな」と痛感しましたね(苦笑)。一人でやっていたら、多分続かなかったのかなとは思います。
スポンサーさんの支えもありますし、今シーズンいままで以上に積極的に活動できているのは、千葉ジェッツがサポートしてくれることが大きいです。「チーム原」ではないですけど、みんなが支えてくれていますね。
例えば、僕の性格上、バスケットボール選手としての活動に集中したいときもあるのですが、その裏でチームが関係者に連絡をしたり、いろいろと動いてくれるというのが本当に大きいです。それに僕自身が何かやりたいことを、素朴なぼんやりとしたイメージで伝えても、長年一緒にやってくれることもあってかチームが理解してくれて、より明確な形にしてくれることもあります。
このように、支えてくれる人たちがいるからこそ、僕自身無理も感じませんし、本業にも支障がありません。それこそが『ハラの輪』が続いて、発展している要因かなと思いますね。
ーー原選手がぼんやり言ってくれることで、まわりの皆さんもやりがいを感じるんじゃないでしょうか?
原)そうかもしれませんね!同級生や知り合いの選手の話を聞くと、チームと選手・会社との関係性、やり方もあって、なかなか活動をしたくても、実現しないことがあるみたいです。順位付けをするものではないですが、活動をここまでサポートしてくれるチームは、千葉ジェッツが一番かなと感じますね。本当にありがたいです。
「“ささえる”からはじまる社会貢献」千葉ジェッツふなばしが目指す社会貢献プロジェクト アスリートだからこそ、この病気のことをもっと伝えたい
ーー今後の「ハラの輪」の目標や、目指す姿を教えて下さい。
原)まずは病院訪問の回数や、試合に招待する人数を増やすなど、現在の活動を止めずに続け、少しずつ大きくすることが大事だと思っています。
楽しいと感じてもらったり、バスケットボールという競技や活躍する選手を知って、憧れを持つ人を増やして、どんどん輪を広げていきたいです。
そして、小さい子どもから大人まで、この「潰瘍性大腸炎」という病気を、多くの人に知ってもらいたいという想いが強いです。
例えば、潰瘍性大腸炎の人は、トイレにめちゃくちゃ行きたくなるタイミングがあります。これが例えば学生だったら、何回も授業を途中で抜けないといけない。そうした不安などの精神面が、またお腹が痛くなる原因にもなります。でも、「こういう症状だ」とまわりが理解してくれていたら、それだけでも本人はすごく気が楽になるんです。
僕の場合も、みんなが僕の病気のことを知っているので、トイレに行きたくなれば、「病気だから行きたい」といえる状況だったので、感じるストレスがとても少なかったです。
この病気を患っている人が過ごしやすいように、「こういう病気があるよ」というのをいろいろな人に伝えられたり、誰かが知るきっかけになることが、『ハラの輪』の目指す姿ですね。
ーー原選手のようなアスリートがこういった発信をすることは素晴らしいですし、潰瘍性大腸炎のことを理解する、とても良いきっかけになるはずです。これからの『ハラの輪』の広がりに注目しています!
ーー本日はありがとうございました!
ハラの輪の活動でクリスマスプレゼント!
「ハラの輪」の活動で、千葉県こども病院に入院されている皆さまへ、計100点のクリスマスプレゼントを寄贈いたしました。
ハラの輪
©CHIBAJETS FUNABASHI
プレゼントは、原選手のサプライヤーで、アンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドームからの協力で実現しました。
ポータブルハイタッチ~触覚で伝わるウェルビーイングプロジェクト~
2/12(日)のホームゲームでは、NTT社会情報研究所と千葉県こども病院の協力のもと、長期入院治療中の小児患者とそのご家族がいる病棟と、原選手をはじめとする千葉ジェッツの選手たちがいる船橋アリーナをインターネットで繋ぐ「ポータブルハイタッチ」(離れていても触れ合う感覚を伝えられる体験)を実施しました。
ハイタッチだけでなく、ドリブルの“音”を振動としてつなげることで、会場の臨場感を共有することができるシステムを用いて多くの選手が子どもたちと触れ合いました!
©CHIBAJETS FUNABASHI
スポーツで読む・知る・病気のコト!シリーズについて
スポーツ選手を通して多くの人が病気を正しく知り、ヘルスリテラシーを高めることで罹患者がよりよい生活を過ごせる社会を目指すことを目的としたティーペックとSports for Social(https://sports-for-social.com/)の共同企画です。
*Sports for Social(https://sports-for-social.com/)について
スポーツを通して社会貢献活動を応援するメディア。スポーツと社会貢献活動は、想いある人が共感者を集めて同じゴールを目指すという共通点がある一方で、社会貢献活動は認知度が上がりにくいという課題意識を持っている。その課題解決のため、スポーツ選手やチームの話題のみにとどまらず、企業や団体とタックを組み社会課題を取り上げ、メディアで扱うニュースは多岐にわたる。
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※当記事は2023年8月時点で作成したものです。