新型コロナウイルスはいつまで感染拡大を続けるか

感染免疫学がご専門の、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生に「新型コロナウイルスはいつまで感染拡大を続けるか」をテーマに解説いただいた記事をご紹介いたします。(以下、藤田先生執筆)
今、世界中で感染拡大を続けている新型コロナウイルス感染は昨年2019年の年末に中国武漢市で発生したと報道され、本年2020年になると、瞬く間に世界中に広がりました。ところが、2019年9月頃にイタリアで、このウイルスがすでに拡散していたという研究結果が、ごく最近2020年11月に発表されました。
いずれにしろ、新型コロナウイルスは最近地球上に出現した新しいウイルスであることに違いはありません。従って、まだ不明な点は多いのですが、徐々に新型コロナウイルスの実態が明らかになってきています。その一つは自然免疫が感染防御に重要な働きをしているということです。
免疫には自然免疫と獲得免疫があり、獲得免疫では新型コロナウイルスの感染は防げないということがわかってきたのです。従って、獲得免疫をあげるような従来のワクチンでは、新型コロナウイルス感染を抑えることができません。
新型コロナウイルスに対して、「メッセンジャーRNA(mRNA)」技術と呼ぶ、新手法を使ったワクチンが開発終盤で、相次いで高い有効性を示しています。
アメリカ製薬新興モデルナ社と、同国製薬大手のファイザー社がこのほど、ともに有効性が90%を超える高い数値を発表しました。このワクチンが、本当に有効ならこの新型コロナウイルス感染の終息は近い将来に可能になるということが考えられます。

しかし、このワクチンには問題点も多数あり、実用化されるまでもう少し時間が必要になりそうです。
それでは、どうすれば、新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐことができるのでしょうか。
ご存知のように日本では、現在毎日のように新型コロナウイルス感染者が増えています。日本国民のほとんどがマスクをし、手洗いをし、三密を避け、換気を行っているのにもかかわらず、感染者は増える一方です。
私は日本国民の新型コロナウイルスの感染防御の方法に抜けている対策があると思います。新型コロナウイルスは我々の口や鼻から入り込んで、気道の粘膜に付着することで感染します。気道にはウイルスに対する防御機能があります。気道の粘膜を覆う繊毛でウイルスを捉え、繊毛の働きで、咳やたんとして、体外に排出します。
繊毛は乾燥に弱く、空気が乾燥する冬になると、動きが鈍くなりウイルスを排出する働きも弱くなってきます。また、空気が乾燥すると、喉に炎症を起こしやすくなり、ウイルスが侵入しやすくなってしまいます。ウイルス側から見ても人間側から見ても、新型コロナウイルス感染予防のためには乾燥対策が重要になってくるというわけです。

一般的にウイルスは宿主の細胞内でなければ、増殖も生存もできません。普通ウイルスの多くは気温と湿度が低く、乾燥している環境で生存率が高まります。1961年に発表された温度と湿度とインフルエンザウイルスの寿命の関係を調べた研究があります。
温度7~8度・湿度20~25%の環境では、6時間後のウイルスの生存率は63%でしたが、湿度49〜51%では、ウイルスの生存率は42%、湿度80〜82%では、ウイルスの生存率は35%に低下しました。
さらに、温度が32度の場合、湿度が49〜51%の環境では、ウイルスの生存率はほぼ0%でした。すなわち、湿度が低い環境では、ウイルスの生存率が高まるだけでなく、感染力もアップするということです。
人体と同じようにウイルスにも水分が含まれています。湿度が高い環境では、ウイルスが空気中の水分を取り込んで重くなるため、長時間に渡って、空気中を漂うことができなくなります。感染者が咳やくしゃみをした時にも、遠くまで飛散することなく、すぐに地面に落下して感染力は失われるのです。
新型コロナウイルスはまだわかってない点も多いですが、これまでに気温や湿度の関係について、調べた研究がいくつか報告されています。
アメリカのメリーランド大学のグループが世界の50都市を対象に気温・湿度と新型コロナウイルスの流行の関係を分析したところ、平均気温が5~11度で、湿度が低い地域に感染者が多く集中していたといいます。
ですから、気温と湿度が低い日本の冬が新型コロナウイルスの感染率を高めるということになります。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためには、マスク着用、手洗い、三密を避ける、換気することに加え、特に日本の冬は、高湿度を保つことが1番の対策だと、私は思うのです。
暖房器具を使用していると、室内はますます乾燥しやすくなります。暖房と適当な換気、加湿で部屋の湿度を50〜60%に保ち、新型コロナウイルスの感染を防ぐことが必要です。

そのほかに重要なことは自然免疫を高めておくことです。自然免疫はストレスや食事内容が非常に影響しますので、規則正しい食事、暴飲暴食を避け、免疫力を落とすような添加物の入った食品を摂らないようにするなどを心がけることも重要です。
このように、乾燥時期は湿度を保ち、自然免疫を高める生活を日々心がければ、徐々に新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられると私は思います。
藤田 紘一郎(ふじた こういちろう)

医学博士
東京医科歯科大学名誉教授
1939年旧満州に生まれる。東京医科歯科大学医学部卒業、東京大学医学系大学院修了、テキサス大学留学後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授、東京医科歯科大学院教授を経て、現在に至る。専門は、寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。1983年寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を受賞。1995年、『笑うカイチュウ』で講談社出版文化賞・科学出版賞を受賞。2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。主な学会活動、日米協力医学研究会の日本代表、NPO自然免疫健康研究会理事長を歴任。主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)、『脳はバカ、腸は賢い』(知的生きかた文庫三笠書房)、『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『ヤセたければ腸内「デブ菌」を減らしなさい』(以上ワニブックスplus新書)などがある。
メデイア出演テレビでは『NHK課外授業ようこそ先輩』『NHK人間講座』『NHK Eテレ又吉直樹のヘウレーカ』『日本テレビ世界一受けたい授業』など、ラジオでは『NHK第2ラジオこころをよむ』など多数出演。
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※当記事は2020年11月時点で作成したものです。
※新型コロナウイルス感染症に関する情報は随時変更になる可能性がありますので、予めご了承ください。
