非常時におけるセルフケア
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、これまでの日常を過ごすことが難しくなり、様々なストレスを感じている方も多いと思います。今回は、このような非常事態で活用できるセルフケアについてご案内します。心身の健康を整えていただく一助にしていただければ幸いです。
非常時や強いストレスを感じた時の変化
非常時や強いストレスを感じる状況下では、下図のような感情や症状が自然な反応として起こることがあります。
新型コロナウイルス感染症は、世界的にも初めての経験であり、誰もが不安や恐怖などの感情を抱いて当たり前の状況です。その他にも、パニック、怒り、悲しみ、落ち込みなどの感情を抱く方もいるでしょう。さらに、食欲の低下、寝つきの悪さ、自身のペースの乱れなどの変化を来す場合もあります。
対処方法1:生活リズムを整える
まずは、日常の生活のリズムを整えることが何よりの基本です。
◆食事や睡眠などの生活リズムを取り戻す
◆気持ちの切り替えなどのリラックスできる時間を今までよりも増やすことを心掛ける
◆食生活では、5大栄養素(糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル)をバランスよく取り入れた食事を用意し、ゆっくり楽しんで味わう
対処方法2:不安に対処する
不安や緊張が続き、リラックスする時間が減ると、身体的にも精神的にも疲弊をしていきます。疲弊を防ぐためには、リラックスする時間を持つことが重要です。
◆情報収集時は、情報に触れる時間や情報発信元を絞るなどの工夫をする
◆不安や緊張を和らげるためには、リラクセーションが有効
・リラクセーションの基本は、呼吸。腹式呼吸、深呼吸を心がける
・筋弛緩法と呼ばれる筋肉を弛緩させるリラクセーションによって、リラックス効果が得られる
①70%の力で、体の一部の筋肉(例えば肩:下図のようなイメージ)に5~8秒ほど力を入れる
②その後、力を抜いて10秒ほど脱力して、力が抜けた感じを味わう
※緊張していることに気づいた時、これから緊張する場面に赴く時、眠る前などに行なうことが有効
対処方法3:楽しいことをする
ストレスが溜まると感染症への抵抗力も弱まると言われています。心の健康に良い影響を与える感情は「嬉しい」「楽しい」「ほっこりする」などのポジティブな感情です。好きで楽しいことをやってストレス解消をしましょう。好きで楽しいことをやっている時が心の健康にとって最高の栄養になります。
◆音楽を聴く、歌を歌う
◆アロマなどの香りを楽しむ
◆お笑いを見る、大声を出して笑う
◆ペットと遊ぶ、犬や猫などの動画を見る
◆配信動画を見て、体操・運動・一緒に歌う・踊る
ストレスがかかることにより、元々持っていたメンタルヘルスの不調や身体的な症状に関する不安などがより表に現れてきています。さらに、ウイルスは目に見えず、感染者がどこにいるかも分からないため、ティーペックの電話によるメンタルヘルス相談へも「自分も感染してしまうのではないか」と不安に思う気持ちが多く語られています。
「Withコロナ」の状態がしばらく続くといわれる今の状況では、どのような方でもメンタルヘルスの不調をきたす可能性が高まることが考えられます。そうならないためにも、今は我慢をせざるを得ない状況だったり、しんどい思いを抱えている状況であることなどを相互に理解し合い、社会全体で支え合えることが重要であると思います。
※下記「非常時におけるセルフケア」のPDFは、ログイン後にダウンロードいただけます。
非常時におけるセルフケア(PDF:875.1KB)
非常時における家族のセルフケア
新型コロナウイルス感染症対策として、自宅で過ごす時間を楽しむ方がいる一方で、ストレスを抱えている方も多いと思います。特に子どものいるご家庭では、子どもの時差登校や短縮授業、オンライン授業などの環境の変化で、生活が一変した方も多いのではないでしょうか。
ティーペックの電話によるメンタルヘルス相談へも、新型コロナウイルスに関連したご家族の問題に関する相談が寄せられています。
【新型コロナウイルスに関連した家族間の問題について寄せられた相談】
外出自粛により、夫婦・親子・親戚間の問題が生じたり、元々あった問題が表面化・悪化しているようです。外出自粛が長期化したり、感染症対策の価値観の差が、イライラにつながり、気持ちに余裕のないコミュニケーションが、関係の悪化に拍車をかけていると考えられます。また、家事、育児、介護などの役割分担の不平等感は精神、身体両面のストレスになっているようです。
関係が悪化した状態で、長時間一緒にいるというのは大きなストレスになり、一人の時間の確保が困難な状況で、逃れられない閉塞感は一層ストレスになっていると見受けられます。
イライラや疲弊が募ったとき、家族が攻撃的な関係になるか、相互にケアをして支え合えるかは大きな違いとなります。
ご家族に対してのケア
ご家族と話し合う時間を作りましょう。
特に、子どもに対しては、居心地の良い場所で、一人ひとりと話をすることが大切です。
1.子どもにいつもと異なる反応や行動がみられる場合がある
子どもたちの中には、自分や家族も病気になるのではないかと不安を抱き、下記のような状態がみられることがあります。
◆腹痛や頭痛、不眠、食欲不振などの身体症状を示す。
◆いつもより泣いたり、大人にしがみついて離れなかったりする。
◆幼い言動、夜尿、お漏らし、わがままになるなど、いわゆる赤ちゃんがえりをする。
◆新型コロナウイルスをモチーフにした遊びなど、遊びの中で起きている出来事を再現する。
2.子どもの安心感を取り戻すために
◆子どもたちには、分かりやすい言葉で、正しい情報を説明する。
◆怖い気持ちや間違った思い込みがあれば聴いてあげる。どんな気持ちも否定せずに、まずは聴き、共感する。
3.親のセルフケアも大切です
親だって疲れています。頑張りすぎには要注意です。
大人の心の状態は、子どもの心の状態に大きく影響を及ぼすといわれています。
◆1日1回は立ち止まって、自分の心の状態を確認する。
◆リラックス法を見つける。
◆相談先を見つける。(家族の症状についてや、自分が抱えているストレスについて相談できる人・窓口)
新型コロナウイルスに対するストレスを感じるのは、感染症対策に取り組みながら、ご家族と真剣に向き合おうとしているからだと思います。辛いときは一人で抱え込まず、信頼できる人へ相談したり、相談窓口などを利用してみることもセルフケアの一つになります。
※下記「非常時におけるセルフケア~家族編~」のPDFは、ログイン後にダウンロードいただけます。
非常時におけるセルフケア ~家族編~(PDF:890KB)
T-PEC EAPセンター
**************
参考:
・ World Health Organization「Coping with stress during the 2019-nCoV outbreak」
https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/coping-with-stress.pdf?sfvrsn=9845bc3a_2
・一般社団法人日本産業カウンセラー協会「新型コロナウイルスに対する心と体の免疫力をつける」
https://www.counselor.or.jp/covid19/covid19column8/tabid/514/Default.aspx
・一般社団法人日本心理臨床学会「コミュニティの危機とこころのケア」
https://www.ajcp.info/heart311/
・日本赤十字社「新型コロナウイルス感染症対応に従事されている方のこころの健康を維持するために」
・一般社団法人日本産業カウンセラー協会「新型コロナウイルス感染症対応―テレワーク(在宅勤務)取り組みの留意点―」
https://www.counselor.or.jp/covid19/covid19column6/tabid/512/Default.aspx
・国立研究開発法人国立成育医療研究センター「新型コロナウイルスと子どものストレスについて」
http://www.ncchd.go.jp/news/2020/20200410.html
**************
※当記事は2020年6月時点で作成したものです。