特集
健康経営 2018/02/10

意識していますか? 仕事と健康管理

社会人になると「健康管理も仕事のうち」とよくいわれます。確かに、元気でなければ能力を最大限に発揮できませんし、体調を崩して会社を休んだり、仕事のパフォーマンスが低下すれば、その穴埋めを誰かが担うことになってしまいます。健康を維持することは働くことの第一条件なのです。
 さらに、健康管理は日々の体調だけでなく、将来を見据えた生活習慣病の予防も含まれます。若い頃は痩せていたのに気が付けば肥満気味だったり、タバコがやめられなかったり、お酒を飲み過ぎたりの毎日で、次第に健診結果が気になってきた人もいることでしょう。体に悪いと分かっていても、「まだちゃんと働けているから大丈夫」とそのままの生活を続けると、やがて生活習慣病を発症する可能性が高くなってしまいます。
 目指すのは、なんとか働ける最低限の体調でなく、自分で最高と思えるパフォーマンスを発揮するための健康の維持。新年度に向け、自分自身の体調の維持・改善のためにも、新人に健康管理の重要性を指導するためにも、年齢を重ねるほど健康には気を使いたいものです。

欠勤よりも損失が大きい、体調不良での出勤

日本では、「多少体調が悪かろうが、這ってでも会社に来い」などという上司の言葉が当たり前にまかり通っていた時代がありました。しかし、そこまで言われなくなった現在でも、「ちょっと体調が悪い」程度では会社を休まない人が多くいます。それは、欠勤や遅刻、早退などは目に付きやすく、また、職場にいない状況が会社や同僚に損失を与えてしまうと考えてしまうためです。
 しかし、出勤しているのに体調不良でパフォーマンスが低下することは「プレゼンティーイズム」と呼ばれ、欠勤などによる生産性の低下である「アブセンティーイズム」より、大きな労働損失を生んでいることが明らかになっています。体調が悪いために労働意欲や集中力が低下し、業務遂行能力が落ち込んでしまっては、せっかく出勤しても意味をなさなくなってしまいます。
 仕事に成果が求められる時代です。そして、経営者ばかりではなく労働者からも、時間に縛られない働き方を求める声が高まってきています。「会社にいること=働くこと」という発想から、自分の能力を100%発揮することが仕事の成果を上げる、そして、会社や社会への貢献や自己実現につながる、という考え方に変えていくことが必要なのではないでしょうか。

健康を二の次にしてまでも働いてしまいがちな日本人。勤勉という国民性もありますが、長時間労働や遅くまで会社にいることを評価する、日本独特の企業風土もその理由の一つに挙げられます。
ブラック企業や過労死などが問題となって久しく、その対策として、政府は「働き方改革」を推進することを発表し、「働き方改革関連法」が成立しました。同法では、長時間労働の是正などを第一の課題に掲げ、残業時間に罰則付きの上限を設け、さらに終業から翌日の始業までに一定の休息を確保する「勤務間インターバル制度」を努力義務として課すなど、働き過ぎの抑制や健康確保に配慮しています。
すでにさまざまな企業で独自に「働き方改革」の試みが始まっており、そうした話題を耳にすることが多くなってきました。パソコン、タブレットなどを使ってオフィス外で仕事ができる「リモートワーク(テレワーク)」などを導入する企業も出てきています。柔軟な働き方ができるようになると同時に、社員自身の業務管理能力が求められるようにもなりつつあります。
「健康管理も仕事のうち」という言葉の重みが、今後ますます増してくるのではないでしょうか。

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原稿・社会保険研究所Copyright

※本稿は、ティーペック健康ニュース第305号(2018/2/10発行)より転載しております。

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※当記事は2018年2月時点で作成されたものを元に、データやイラストのみ一部修正したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事が全てのケースにおいて当てはまるわけではありません。