先進医療~2018年度の実績報告から~
2018年度は、「粒子線治療」や「手術支援ロボットによる手術」の一部保険適用が拡大されました。また、がんの遺伝子情報に応じて個別的に治療を行う「がんゲノム医療」に関連した技術が先進医療として認定されるなど、がんの治療が大きく変わった年となりました。
医療技術の進歩は目覚しく、ますます注目度が高まる先進医療について、2018年度の実績報告(2017年7月1日~2018年6月30日)から解説します。
※当記事内の表およびグラフは「厚生労働省【先進医療会議】平成30年度先進医療技術の実績報告等について」より作成しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000205617_00007.html
先進医療費と患者数の推移
2018年度に先進医療を受けた患者は昨年に比べ減少し28,539人でしたが、先進医療に係る費用の総額は約240億円と過去最高となっています。
2012年度と比べると2018年度は患者数、先進医療費総額共に倍増しています。さらに、先進医療総金額も285億円と増加傾向にあり、そのうち先進医療に係る費用の割合は84.3%までふくれあがりました。
また、先進医療技術は2018年6月30日時点で8種類が保険適用、14種類が削除・取り下げとなり、新たに12種類の技術が承認され、92種類(先進医療Aが28種類、先進医療Bが64種類)となっています。
注目すべき先進医療技術の保険適用
保険適用拡大となった先進医療技術の中でも特に注目なのが、粒子線治療です。
1件当りの治療費がとても高額で、先進医療費のおおよそ半分以上を占めていた粒子線治療ですが、2016年に続き2018年4月より患者数の多い前立腺がんと頭頸部がんに対して陽子線・重粒子線治療が、骨軟部腫瘍に対しては陽子線治療が保険適用となりました。
※粒子線治療が先進医療の場合と健康保険の対象となった場合の費用負担に関して詳しく知りたい方はこちら→https://t-pec.jp/ch/article/23
さらに同時期に、ロボット支援手術に対する保険適用も拡大となりました。これまでは前立腺がんと腎臓がんの手術だけでしたが、胃がんや肺がんなど、患者数の多い病気の手術を含む12術式のロボット支援手術が健康保険適用となりました。
2018年度の先進医療実施件数ランキング
「多焦点レンズを用いた水晶体再建術」の実施件数は大きく増加しており、昨年同様先進医療実施件数1位となっています。実施医療機関数も全体の7割以上を占めており、675施設と前年度に比べ120施設も増加しました。「多焦点レンズを用いた水晶体再建術」は加齢が大きな原因の一つである白内障の治療であり、超高齢社会の日本では今後も患者数が増えることが予想されます。
また、昨年度先進医療実施件数ランキング2位であった「前眼部三次元画像解析」は、2018年4月に保険適用となりました。この検査は1件あたりの費用が高額ではないため金額への影響は少なく、2018年度先進医療実績の患者数減少と費用増加の要因であったと推測されます。
もう一つ注目したいのが、ランキングの4位、5位の技術が検査法であることです。ランキング上位の3つの技術ほど件数は多くないものの、前年度に比べて増加しています。「前眼部三次元画像解析」の保険適用なども話題となっており、治療だけではなく検査法も注目すべき先進医療技術となっていることがわかります。
そのなかでも、「がんゲノム医療」の主軸となる「マルチプレックス遺伝子パネル検査」が2018年4月に先進医療技術として認定されました。第3期がん対策推進基本計画の分野別施策では、この「がんゲノム医療」の推進が明記されており、最も期待される先進医療技術の一つであることがうかがえます。
※「がんゲノム医療」について詳しくしりたい方はこちら→→https://t-pec.jp/ch/article/250
厚生労働省「がん対策推進基本計画」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183313.html
2018年度先進医療実績のまとめ
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先進医療の概要や標準治療との違いを整理したい方はこちら→→→https://t-pec.jp/ch/article/173
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参考
「厚生労働省【先進医療会議】平成30年度先進医療技術の実績報告等について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000205617_00007.html
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※当記事は2019年2月時点で作成したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。