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インタビュー/座談会 2021/02/10

ワクチンは新型コロナウイルス感染の救世主になるか

感染免疫学がご専門の、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生に「ワクチンは新型コロナウイルス感染の救世主になるか」をテーマに解説いただいた記事をご紹介いたします。(以下、藤田先生執筆)

感染拡大を続ける新型コロナウイルス

一度沈静化に向かった新型コロナウイルスの感染が令和3年に入って、再び日本全国に感染拡大を始めました。令和3年1月7日には菅首相が1都3県に緊急事態宣言を発令し、1月13日には1都3県の他、7府県にも緊急事態宣言が出されました。

それにもかかわらず、新型コロナウイルス感染が沈静化せず、日本国民が不安の日々を送っています。東京都などでは病床がひっ迫して、救急患者の搬送困難事例が急増し、令和3年1月は前の月のおよそ2倍の数になりました。

一度患者数が減った新型コロナウイルス感染がなぜ再びこんなに増えてきたのでしょうか。
その理由の一つに新型コロナウイルス感染は集団免疫がつきにくいということがあります。このことについてはWHOが令和3年1月11日に新型コロナウイルスの集団免疫は今年中に獲得するのが難しいと述べています。

ワクチン接種によって新型コロナウイルス感染が0.015%に減った

イギリスオックスフォード大学を拠点とする「Our World in Data」によると、本年1月25日まで、イスラエルは人口比ワクチン接種率が30.77%と圧倒的に世界でトップになっています。イスラエル全体人口約860万人のうち、260万人が1回目の接種を終えて、このうち約120万人は2回目の接種も終えました。

去年12月20日に60歳以上から始まった接種対象年齢はすでに40歳代にまで、下がっています。大学入試を控えた16歳から18歳の青少年を対象にした接種も始まりました。3月末までに全国民のワクチン接種を終えるというのが、イスラエル政府の目標なのです。

イスラエルの他に新型コロナウイルスのワクチンをすでに少なくとも一回接種した国は、1月25日現在、以下のような数値になっています。

アラブ首長国連邦23.47%、イギリス9.68%、バーレーン8.47%、アメリカ合衆国5.59%、デンマーク3.16%、アイスランド3.06%、アイルランド2.9%、スペイン2.46%、イタリア2.12%、ドイツ1.86%、フランス1.61%、トルコ1.54%、スエーデン1.45%、アルゼンチン0.58%、メキシコ0.47%、ブラジル0.33%、インド0.12%となっています。

アメリカ製薬大手ファイザー社のワクチン接種を世界最初に始めたイギリスの人口比ワクチン接種率は上に述べたように9.68%、同様に2番目に開始したアメリカの接種率は5.59%でした。反面、イスラエルの接種率は30.77%で、他国をずば抜けて先頭に立っていることがわかります。

なぜイスラエルがこんなに超高速で、ワクチン接種を行うことができたのでしょうか。ウォール・ストリート・ジャーナルは「イスラエル全域にワクチン接種所が300箇所程度あり、軍隊はそこに軍医官を含む人材700人を支援している」と伝えました。また、イスラエル政府はソーシャル・メディア・サービスなどに広がったワクチンに対する誤った情報を正そうとして色々努力をしました。テレビなど、メディアに医学専門家がしばしば出演してワクチンに対する漠然とした不安を払拭させました。そうして、ワクチンの接種を終えた人にイベントや飲食店への出入りを認めるグリーン・パスポートを発給して、ワクチン接種率を高める努力をしたのです。

タイムズ・オブ・イスラエルが1月25日(現地時間)に報じた、医療管理機関マカビの調査によると、2回目の接種後1週間では12万8000人の中で新型コロナウイルスに感染した人はわずか20人で、感染率が0.015%にとどまったとのことです。イスラエルでの新型コロナウイルス新規感染者数の週間平均値とワクチン接種割合を表1に図示します。

日本人の高齢者のワクチン接種はいつ頃開始できるか

厚生労働省が想定する新型コロナウイルスワクチン接種スケジュールが発表されました。それによると、ファイザー社のワクチンが2月中に承認されると見越し、まず、2月下旬に公的病院などで、新型コロナウイルス感染患者らの治療にあたる医療従事者を対象に先行接種を始めるということです。

3月中旬には他の医療従事者、65歳以上の高齢者への接種の開始は4月1日以降になる見込みということです。その後はワクチンの確保状況に応じて、基礎疾患を持つ人や高齢者施設の職員、60歳から64歳の人へと順次、広げていく方針だそうです。

迅速なワクチン接種への試金石となるのが約3600万人に及ぶ高齢者です。ファイザー社のワクチンは3週間の間隔で、2回接種が推奨されています。国は自治体に高齢者全員が2回の接種を3ヶ月以内に終えられるよう必要な接種体制を構築するように求めました。

しかしこれには、色々な問題点があります。ワクチンは超低温で保存しなければなりません。ファイザー社のワクチンは-70±10℃で保管する必要があります。また、国は接種会場を1万箇所用意する方針ということですが、それが可能かどうかという問題点もあります。さらに、ワクチン接種のための人手が確保できるかどうかの問題もあります。これらの問題を全てクリアして、スムーズに新型コロナウイルスのワクチン接種が行われるかが、今後の課題となります。

河野太郎規制改革担当相は1月26日の衆議院予算委員会で、新型コロナウイルスのワクチン接種について、業務そのものにマイナンバーカードもマイナンバーも必要ないと述べました。自治体が交付する接種券(クーポン)を会場に持っていけば、接種を受けられると説明しました。

ワクチン接種がスムーズに行われれば、イスラエルの例の通り、新型コロナウイルス感染が終息に向かうことを期待できると思います。

藤田 紘一郎(ふじた こういちろう)

医学博士
東京医科歯科大学名誉教授
1939年旧満州に生まれる。東京医科歯科大学医学部卒業、東京大学医学系大学院修了、テキサス大学留学後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授、東京医科歯科大学院教授を経て、現在に至る。専門は、寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。1983年寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を受賞。1995年、『笑うカイチュウ』で講談社出版文化賞・科学出版賞を受賞。2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。主な学会活動、日米協力医学研究会の日本代表、NPO自然免疫健康研究会理事長を歴任。主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)、『脳はバカ、腸は賢い』(知的生きかた文庫三笠書房)、『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『ヤセたければ腸内「デブ菌」を減らしなさい』(以上ワニブックスplus新書)などがある。
メデイア出演テレビでは『NHK課外授業ようこそ先輩』『NHK人間講座』『NHK Eテレ又吉直樹のヘウレーカ』『日本テレビ世界一受けたい授業』など、ラジオでは『NHK第2ラジオこころをよむ』など多数出演。

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※当記事は2021年1月時点で作成したものです。
※新型コロナウイルス感染症に関する情報は随時変更になる可能性がありますので、予めご了承ください。